Kenny Rankin「Lyin' Eyes」
LP『After The Roses』Atlantic SD-19271(1980)
 2009年6月7日、Kenny Rankinが死去しました。7年前の来日公演を観て以来、出来ることならもう一回あの温かい歌声を生で聴きたいと思っていたのでとても残念です。ご冥福をお祈りします。
 Kenny Rankinとの出会いは名盤『Silver Morning』でした。ブラジルともAORともジャズとも言えないジャンルを超越した音楽性や、自己を投影する内省性を秘めたシンガーとして、また心地よいイージー・リスニングとしても聴けるという2面性など、これまでに自分が出会ったことのない音楽体験をもたらしてくれた、衝撃的な内容でした。 "ブラジル音楽"という気持ち良さ気なキーワードが、自分の中に刻み込まれたきっかけとなったのもこの『Silver Morning』だったような気がします。
 その後、他のアルバムも聴いて驚いたのは、全てのアルバムのクオリティの高さ。ラテン、ジャズ、フォーク、ポップスなど、あらゆる音楽性を内包しつつ、どのアルバムにもKenny Rankin印の最高の気持ち良さが詰まっています。そんな作品群の中で最も今の気分にフィットするのが、アトランティックに移籍して80年に発表した『After The Roses』です。古くからKennyの才能を認めていて『Kenny Rankin Album』で初コンビを組んだDon Costaが再びプロデュースを務め、よりスタンダードにアダルトになった作品。ジャケットに描かれた薔薇のツタのように可憐に絡まるストリングスの音色が、ストリングス・フェチの自分にはたまらない魅力となっています。全曲素晴らしいのですが、Kenny Rankin史上一番らしくないカヴァーであろうと思われるEaglesの「Lyin' Eyes」の、原曲の面影が全く感じられない"俺流アレンジ"に敬意を表して、この曲を選びたいと思います。