Tom Waits「(Looking For)The Heart Of Saturday Night」
LP『The Heart Of Saturday Night』Asylum P-10243Y(1974)
 Tom Waitsの初期の名盤です。このアルバムは高校生の時にちょっぴり背伸びして買って、当時好きだった佐野元春さんの『Heart Beat』やBilly Joelの『Streetlife Serenade』なんかと一緒によく聴いたものでした。これらの作品に通底する、"都会で生きる若者特有の寂寥感"みたいなものに共感していたんだと思います。
 Jackson Browneや、Eaglesの晴れわたった爽やかさが一般的なアサイラムのイメージだとすると、Tom Waitsの音楽性は"夜"で、かなりレーベル・カラーから外れています。1stの『Closing Time』はフォーキーでシンガー・ソングライターのイメージが強いけど、この2ndは本格的にジャズに接近。ジャケットからしてFrank Sinatraの『In The Wee Small Hours』を彷彿とさせます。しかしメロディ、アレンジと共に1stよりも明快で聴きやすく、そこら辺はプロデューサーBones Howeの力量なんでしょうか。このタイトル曲は特にメロディが良くて何度聴いたか分からないほど。トーキング・ブルースならぬトーキング・ジャズ(?)風の「Diamonds On My Windshield」のベースがフェイド・アウトしきらないうちに、車のクラクションや街のざわめきが重なってアコースティック・ギターのイントロが流れ出します。この流れが完璧で、土曜日の夜のハメを外したくなるようなソワソワした気分と、それでいて妙にセンチメンタルな気分が入り混じった特別な感情を思いっきり煽ってくれます。大した予定もないお粗末な週末の始まりであっても、女の子を口説いて車の中で彼女の肩に腕をまわす(そんな歌詞なのです)なんて想像をしながら、街に繰り出して行きたくなるような気分にさせてくれるのです。