Gilbert O'Sullivan「If I Don't Get You(Back Again)」
LP『Himself』MAM SS501(1971)
 数あるGilbert O'Sullivanのアルバムの中で、今でも一番ターンテーブルに乗せることが多いこのデビュー・アルバム、『Himself』というタイトルからも窺える通り、繊細で純粋な人間性の中にも時々俯き加減に世の中を見てるような彼の目線が垣間見られます。「Alone Again(Naturally)」の大ヒット以降、ファッションも音楽性もアメリカナイズされ垢抜けていった彼の映像や写真からは、どこか居心地の悪さを感じ取ってしまいますが、本作にはアイルランド出身のちょっと屈折した青年像がありのままにトレースされているように思います。とにかく当時も今も一番好きな曲は「If I Don't Get You(Back Again)」と「Matrimony」の2曲。前者は"ブルーな時は夜空の星を見上げる"なんて詞が、高校生(当時)の心にバシバシ刺さり捲ったバラード。ほぼ同時期に聴いていた佐野元春の「グッバイからはじめよう」のスキャット部分が酷似していることも何か嬉しかったり…。後者はライヴでもよく披露してくれる、恐らく彼自身お気に入りの曲。結婚当日の慌ただしい新郎、新婦の模様をコミカルに描いたポップ・ソングで、ピアノの弾むリズムが2人の浮かれた気持ちを表していて幸せな気分にさせてくれます。でもどんなに明るい曲を作っても、その奥に不安や翳りを同時に潜ませているのが彼の魅力なんですよね。
 どのアルバムを聴いても、難易度の高いコード進行やちょっと変なメロディ・ラインを忍ばせるといった一筋縄ではいかないポップ・センスが感じられます。「Alone Again(Naturally)」だけのベタなヒット歌手と思ったら大間違い、実は高度な音楽性を誇るミュージシャンズ・ミュージシャンの一面も持っていることも強調しておきたいです。