Dion「Didn't You Change」
LP『Suite For Late Summer』Warner BS 2642(1972)
 50年代後半から60年代初頭にかけて華々しくアメリカン・ポップスを彩ったシンガーやライターが、70年代に入りシンガー・ソングライターに転身して発表したアルバムは、なぜこうも深くて誠実で、優しく心に染み渡るのでしょうか。Barry Mannの『Lay It All Out』、Phil Everlyの『Star Spangled Springrer』、Bobby Darinの『Commitment』など、個人的に忘れられない名作が結構あります。ティーンエイジ・ポップス黄金時代を築き、その後The Beatlesの出現で一斉に低迷期に突入、狂乱の60年代後半を横目で見ながら除々に自分の心の内を見つめていった元スター達は、ようやくありのままの自分の歌を自然に歌いだしたって感じがします。DionことDion DiMucciもそんな中の1人と言えるでしょう。
 『Suite For Late Summer』はワーナーでの4作目。Dionといえば東海岸のイメージがありますが、本作はL.A.のワーナー・スタジオで録音されています。プロデュースはバーバンク・サウンドの重要人物Russ Titelman。Nick DeCaroがアコーディオン、オルガン、ピアノ、そしてストリングス・アレンジを担当しています。その過激とも言える甘い弦アレンジと、凛とした佇まいのDionのヴォーカルの対称が素晴らしい。重いリズムと分厚いサウンドで淡々と歌われる「Didn't You Change」という曲を聴くと、細野さんの『Hosono House』の「僕は一寸」を思い出します。そういえば『Suite For Late Summer』と『Hosono House』は同じ空気感を感じます。激しかった夏が終わり、初めて感じる澄んだ冷たい空気感。これは全く個人的な印象で客観的な意見ではないですけど、でもこういう特別な空気感を感じ取ると、僕にとってそれはただのレコードから宝物へと変わるのです。