The Who「Substitute」 LP『Direct Hits』Track 612 006(1966)
1965年にリリースされたシングル「My Generation」で若者の心を捉えたThe Whoは、翌年4枚目のシングルのレコーディング中にプロデューサーのShel Talmyと決裂、デッカ系のBrunswickからReactionへレーベルを移籍しています。その第1弾シングルとしてリリースされたのがこの「Substitute」(邦題「恋のピンチヒッター」)です。冒頭のPete Townshentが弾くアコースティック・ギターのコード・カッティングや、Roger Daltreyのハイ・トーン・ヴォイスに絡むコーラスが印象的なサビを聴くと、「My Generation」や「I Can See For Miles」と比べて随分ポップな印象を受けます。それでも中盤の間奏では例のゴリゴリしたJohn Entwistleの太いベースとKeith Moonのやたらうるさいドラミングが醸し出す唯一無二のハードなサウンドが楽しめます。まるで初期The KinksのギラついたサウンドにThe Beach Boysのスイートなコーラスとメロディが乗っかったような1粒で2倍の美味しさ。この曲や、次作の『A Quick One』に収録の「So Sad About Us」といった彼等の初期ポップ・ソングは、"ハードなリズムとサウンド+甘いメロディとハーモニー"という個人的に一番のツボにくる類いの音楽で、例えば同時期のBeatlesの「And Your Bird Can Sing」辺りと一緒になって、後のパワー・ポップの雛形になったんじゃないかと思ったりします。
この曲はオリジナル盤には収録されていないので、68年にイギリスで編纂された『Direct Hits』というベスト盤を紹介します。『Sell Out』までの初期3枚からの代表曲とシングルで構成されていて、僕みたいに初期が好きな方にお薦めです。ブリティッシュな風景写真がレイアウトされたジャケもポイント高しですね。