Paul Simon「Kathy's Song」
LP『The Paul Simon Song Book』CBS 62579(1965)
 Paul Simonの書くメロディと詞は、何となく雨、曇天、冬といったイメージを感じます。そのせいか、この「Kathy's Song」は昔から僕のNo.1レイン・ソングなのでした。"僕はこぬか雨の音を聞いている"という一節から始まるこの曲は、屋根や壁を叩く雨の音しかしない静かな部屋の中で、ロンドンに残してきたキャシーという恋人のことを想うポールの詩が感動的です。"韻をふむために引き裂きこじつけた詩"と、自分が書いた歌さえもウソっぽく感じ始めた時、"唯一の真実はただ君だけ"と気付くポール。アコースティック・ギター一本で淡々と歌われる物静かな佇まいの中に、熱い愛の声明が隠されています。
 この曲のS&G版は66年の『Sounds Of Silence』に収められていますが、どちらかと言えば65年にロンドンでソロとしてレコーディングされた『The Paul Simon Song Book』のヴァージョンの方が好きです。本作には「I Am A Rock」「April Come She Will」「Flowers Never Bend With The Rainfall」など、後のS&Gの重要曲がすでに録音されており、完成度はS&Gヴァージョンには敵わないものの、素朴さと情熱ではこのソロの方が上だと思います。イギリス滞在中のフォーク・クラブ・サーキットによって高められたギターの演奏力も特筆もので、流れるようなフィンガー・ピッキングや激しいストロークの強弱は、詩の中の感情の変化と完璧にリンクしています。僕は中学生の時にこの「Kathy's Song」と「April Come She Will」を聴いてギターを始めました。ハード・ロック全盛の80年代に、安物のガット・ギターでこっそりアルペジオを練習し始めた理由はただ、Paul Simonになりたかったからです。