『ダークマン』
「Darkman」(1990年 アメリカ)
 人工皮膚の開発に勤しむ科学者のペイトンは、弁護士である恋人の収賄事件に巻き込まれ、殺し屋に研究室ごと爆破されます。全身に大火傷を負って醜い姿になってしまった彼は、自身の開発する人工皮膚によってマスクを作り、敵に成りすましながら復讐を果たしていきますが、実はその人工皮膚はまだ実験段階で、太陽の下では99分しか保たなかったのです。…タイトルの『ダークマン』の意味がお分かりでしょうか。
 科学者故の頭脳を駆使して鮮やかに成し遂げる復讐の仕方がいちいち秀逸だったりして、その練られたストーリーもすごいのですが、サム・ライミ監督の過剰な演出がとにかく笑えます。特に、神経を切断されて抑制力を無くした主人公の怒りが爆発する瞬間の描写は、マーベルコミックスに代表されるアメコミのコレクターである彼の面目躍如といったところ。その反面、異型の生物となった主人公の悲しみから滲み出る切ない情感は、デヴィッド・リンチの『エレファント・マン』(80年)やティム・バートンの『シザーハンズ』(90年)といった名作を彷彿とさせます。CG全盛になる前の手作り感覚がB級感を醸し出していたり、ライミの旧友でジョエル・コーエンの夫人であるフランシス・マクドーマンドや『死霊のはらわた』(81年)のアッシュ役で有名なブルース・キャンベル(ライミとは中学以来の映画仲間)といった通受けする出演者など、本作の魅力を語ればキリがありません。
 最近ではシリアスな題材を扱うようになって(98年の『シンプル・プラン』辺りから?)、特大ヒットとなった『スパイダーマン』(02年)もライミにしてはバカっぽさが足りなかったように思います。『XYZマーダーズ』(85年)や『ダークマン』のようなスラップスティックなホラーをもう1度お願いしますよ、ライミさん。