『バニシング・ポイント』
「Vanishing Point」(1971年 アメリカ)
 クエンティン・タランティーノの『デス・プルーフ in グラインドハウス』(07年)は実に面白い映画でした。グラインドハウスとは70年代のアメリカで流行ったB級低俗映画を2、3本立てで上映する映画館のことで、そこで上映されるようなエログロ&ナンセンスな世界がこれでもかと展開されます。いつものことながら音楽の使い方が上手い上に、後半の逆ギレのカタルシスにアドレナリンが大放出、更にエンディングは大爆笑、久々のタランティーノ節が痛快でした。本作には70年代B級映画マニアの2人の女が出てくるのですが、休暇を使ってその女達が企てるのが、ニューシネマの傑作『バニシング・ポイント』に出てくる名車"70年型ダッジ・チャレンジャー"に試乗すること。その試乗中に殺人鬼スタントマン(カート・ラッセル)と遭遇し、デス・カーチェイスが繰り広げられていきます。なので『デス・プルーフ』を観ると『バニシング・ポイント』が観たくなるというわけ。
 『バニシング・ポイント』はベトナム帰りの陸送屋がデンバー〜シスコ間を15時間で走る賭けをしてひたすら爆走するだけのストーリー。ただのスピード違反からやがて国家権力を敵に回すほどの大事に発展し徐々に悲壮感を強めていく後半の展開からは、他のニューシネマに共通する時代の閉塞感を感じます。初めて観た時から強烈な印象を残し、年に1回は必ず観たくなる大好きな映画です。
 タランティーノはDJ的センスを持った次世代の映画作家であり、古くマニアックな映画をネタとして上手く取り込み、マッシュアップした新作として唯一無二な世界観を構築しています。そんな彼のDJネタ『バニシング・ポイント』を若い世代にお薦めします。