『男と女』
「Un Homme Et Une Femme」 (1966年 フランス)
 妻に自殺されたレーサーと、スタントマンの夫を目の前で失った女が出会って次第に恋に落ちていく…。大したストーリーがなくても映像センスと良い音楽があれば、完璧な作品が作れるという見本のような映画です。クロード・ルルーシュによる、まるで『VOUGE』誌の表紙のような洗練された映像(モノクロとカラーが交互にっていうのも当時相当に斬新だったはず)と、ひんやりとした趣のフランシス・レイの音楽が、お互いを芸術の域まで高めあっています。初めてこの映画を観た時、主人公2人の会話シーンなのに、声が消されて音楽が流れていたことに衝撃を受けましたが、何でも撮影時にはすでに音楽が出来上がっており、現場にはあのダバダバなテーマ曲が流れていたというからビックリです。まさに音楽が主役の映画!
 好きなシーンはヒロインの回想場面で、死んだ夫役のピエール・バルーがボサノヴァを讃える歌「Samba Saravah」を歌うところ。ちなみにバルーは後に「Saravah」というレーベルを発足して日本でも人気のレーベルになりますが、本作の音楽にハマった高橋幸宏氏は初ソロ・アルバムのタイトルを『Saravah!』にしたり、教授とこの映画のオマージュ曲を共作したりしています。90年代には池田聡のアルバムに、本作の音楽にモロに影響された曲(ムッシュかまやつ作曲/小西康陽プロデュース)が入っていたりもしました。
 実はこの映画、日本でもこんなに有名なのにオリジナル・サントラ盤のレコードがあんまり出回ってないんです。中古で見るのはジャケがイマイチなアメリカ盤ばかり。フランス旅行の際、パリの蚤市でフランス・オリジナル盤を安く見つけた時は嬉しかったです。