『プレイタイム』
「Playtime」 (1967年 フランス)
 先日DVDで『プレイタイム』を観直しました。何回観てもやはりこの作品は凄い。その凄さを一言で言えば「音、色彩、空間、時間といったあらゆる映画的要素を1人の人間が完璧にコントロールし得た希有な作品」ということになります。その尋常じゃないこだわりによって生まれた魅惑的な感触は、ハリウッドで探すと全盛期のヒッチコックしか思い浮かびません。例えば冒頭の空港シーンの色彩はグレーに統一されていますが、映画が進むにつれて徐々にカラフルになっていきます。それと同時に音もシンプルな効果音から除々に音数が増えていき、後半はラテン、アフリカン・ビート、ミュゼット・ワルツなど、さながら音楽見本市のようになっていきます。更に人々の行動パターンも直線的な動きから段々となめらかな曲線を描くようになっていき、ロータリーを舞台にしたラストシーンでは車がメリーゴーランドのように完全な円形を描くという、素晴らしいクライマックスに帰結します。目眩く色彩と音楽がもたらすこの至福のラストシーンは、言葉ではちょっと表現できないほどの感動です。
 『ぼくの伯父さんの休暇』(52年)で完成させたほのぼのとしたユーモア、次作『ぼくの伯父さん』(58年)で見せた洗練された映像美、その両方をミックスさせた集大成である本作は、巨額の制作費をかけたにも拘らず商業的には大失敗。タチはその後膨大な借金に苦しみ、これほど充実した作品を残せずに亡くなってしまいます。
 この経緯に似た事柄をポップスの歴史で探すと、これはもうブライアン・ウィルソンの『スマイル』ということになります。奇しくも同じ1967年の制作。1967年という年はあらゆるジャンルの想像力が沸騰点に達し、クリエイティヴな魔力に満ち溢れた1年だったんですね。