『5時から7時までのクレオ』
「Cleo De 5 ā 7」 (1961年 フランス)
 アニエス・ヴァルダという監督に出会ったのは大学の頃。確かちょうどヴァルダが夫であるジャック・ドゥミ(90年死去)へ捧げる『ジャック・ドゥミの少年期』(91年)という映画を撮った頃で、神保町の岩波ホールまで観に行ったのです。映画に対する熱い想いを抱くドゥミ少年を描いたこの作品には本当に感動させられました。そして他のヴァルダ作品にも興味を持ってビデオ屋で本作を手に取ったのです。
 『5時から7時までのクレオ』は当時新進女流監督だったヴァルダのデビュー2作目。まずタイトルがイカしてます。この邦題は直訳で、クレオという女性歌手の5時から7時までの行動をほぼリアルタイムで描いた作品。最近体調が悪いクレオは病院で精密検査を受け、その結果が出る7時までパリの街を徘徊します。自分は重病に冒されているかも知れないという主人公の深刻な心境にも拘わらず、カメラは初夏のパリを活き活きと写しだしながら、彼女を追いかけていきます。ドキュメンタリー・タッチでモノクロという、ノワールなのにポップな感じは、その後のリチャード・レスターの作風にも通じる雰囲気。更にこの映画を特別なものにしているのは、音楽も担当しているミシェル・ルグランが出演しているということ。ルグランはボブという作曲家の役でちゃんとした演技と、ピアノを弾いて歌うシーンではあのルグラン節を披露しています。当時まだ20代の若きルグランを観られるだけでも音楽ファンは要チェックです。本作の1年後にヴァルダとジャック・ドゥミは結婚、更にその1年後にドゥミはあの『シェルブールの雨傘』(64年)でブレイク、そしてその音楽を担当していたのがミシェル・ルグランでした。何とも美しき出会いのラインが見えてくるじゃありませんか。