『欲望』
「Blow-Up」 (1966年 イギリス)
 名声を得ている若きフォトグラファーがある朝、公園でカップルを隠し撮りするが、引き伸ばしたネガには死体が映っていた…。ヒッチコックならそこから超一級サスペンスを作ってしまうでしょう。しかし監督は不条理モノを得意とするアントニオーニ。"愛の不毛"や"若者の刹那主義"といった偉い評論家諸氏が語るテーマなど僕にはさっぱりで、目に見えない球でテニスするラスト・シーンなんか今でも「???」です。が、長年どういうわけか妙に心に引っ掛かっている映画というのも事実。何と言ってもあの『バーバレラ』(68年)にも出演していたカメラマン役のデヴィッド・ヘミングスが最高にカッコいい。タッタソールのシャツにホワイト・ジーンズ、ニコンのカメラを持ってロールスロイスのコーニッシュで薄曇りのロンドンを走り回るという、イヤミなほどのスタイリッシュさ。あのカメラマンのモデルはデヴィッド・ベイリーだとかバート・スターンだとか諸説ありますが、あんなスカした、いやイカした人種が集まってたのがスウィンギング・ロンドンだったんでしょうか。そのロンドンの街並を、色が気に食わないという理由でペンキでペイントさせまくったというアントニオーニ監督のこだわりも相当カッコいいです。
 音楽は当時マイルス・デイヴィス・クインテットに在籍中だったハービー・ハンコックが担当。『ナック』(65年)でのジョン・バリーしかり、ヒップでグルーヴィーなオルガンの音色はこの頃のロンドンの描写にピッタリ。マーキーでのヤードバーズの演奏シーンも最高(当初ザ・フーが出演する予定がマネージャーの売り込みでヤードバーズになったとか)。ジェフ・ベックが日本製のギターをブッ壊すシーンなんか何回も観直したいです。