『マダムと泥棒』
「The Ladykillers」(1955年 イギリス)
 以前勤めていた映像制作会社で短編CG映画を作ることになった時、当時話題を呼んでいたイギリス製クレイ・アニメ『ウォレスとグルミット』のシリーズ第2作目『ペンギンに気をつけろ!』(93年)があまりに面白かったために参考にしようということになり、色々と調べたことがありました。そして製作総指揮のニック・パークが影響された映画として挙げていたのが本作『マダムと泥棒』であり、当時は都内のレンタル・ビデオ屋を虱潰しに捜して回って1本だけ見つけて観ることができましたが、2004年にコーエン兄弟が原題の『レディ・キラーズ』というタイトルでリメイクしたおかげで、今ではDVDで簡単に観られるようです。
 マイクル・バルコンが主宰するイーリング・スタジオが製作した、いわゆるイーリング・コメディの大傑作。あのオビ・ワン・ケノービ役で有名なアレック・ギネスやピーター・セラーズの若き姿が見られることでも貴重な作品ですが、とにかくブラックな笑いが終始付きまとうストーリーが最高。人のいいちょっとボケ気味な老婦人に翻弄されまくる悪党たちのドタバタが最高に笑えます。例えば、身寄りのない人を功徳と思って次々に殺していく老婆姉妹が主人公のF・キャプラの『毒薬と老嬢』(44年)や、死体を皆でよってたかって何度も掘り返すヒッチコックの『ハリーの災難』(56年)にも通じるこういうドス黒い笑いのセンスって、道徳性を重んじるマジメな日本人にはちょっと理解しがたい気もします。でも社会倫理なんかには目もくれないタブー無き姿勢が、その後のリチャード・レスターやスタンリー・キューブリックやモンティ・パイソンにも繋がっていくんですよね。もちろんニック・パークやコーエン兄弟にも。たまにはこんな真っ黒な笑いでストレス退治もいいと思います。