『真夏の夜のジャズ』
「Jazz On A Summer's Day」(1959年 アメリカ)
 1958年7月3日から6日まで開催されたニューポート・ジャズ・フェスティヴァルの模様を撮影したドキュメンタリーである本作は、当時弱冠28歳だった写真家、バート・スターンが製作/監督しました。とにかく今観ても(いや今観た方が)そのスタイリッシュな映像に驚かされるはず。バート・スターンは『LIFE』や『Esquire』といった一流雑誌の写真で有名ですが、本作もどのカットを切り取っても写真作品になりそうなほどのクオリティ。大学の時にビデオで観たのが初めてですが、1997年に念願の劇場で観ることができた時の興奮は今でも忘れられません。ジミー・ジェフリー・スリーのクールなサウンドに乗せて揺れる水面に被さるタイトル・クレジット…。グラフィック・センス爆発のこの冒頭シーンだけで、背筋がゾクゾクしたことを憶えています。
 黒のキャプリンを被って上品な色気を振りまくアニタ・オデイ(当時40歳を超えていたはず)のスキャット・シーンや、ステージを客席で観るジェリー・マリガンのクルーカット&サングラス姿(カッコ良すぎ)、ポマードべったりのオールバックでダック・ウォークをキメる若々しいチャック・ベリー等々、ミュージシャンの活き活きした姿が何とも魅力的。サッチモやジョージ・シアリングの動く姿を観たのも本作が初めてでした。でもこの映画を本当に好きな理由は、ホテルの屋上や近くの公園やヨットの上で夏を満喫する観客達の姿に、汚れ無き時代のアメリカのイノセントを感じるから。まるでマイルス・デイヴィスの『Miles Ahead』や、ジャッキー&ロイの『Free And Easy』のスリーヴのような遠い夏の煌めき。ブルース・ジョンストンが「Disney Girls(1957)」で描こうとしたナイーヴで健康的なあの頃を垣間見られるのです。