『パリの恋人』
「Funny Face」(1956年 アメリカ)
 杉真理さんのアルバム『WORLD OF LOVE』に収録されている「シネマは踊る」という曲には、ジーン・ケリーやオードリー・ヘップバーン、フレッド・アステアといった映画スターの名前が出てきます。学生時代にこの曲を聴いて往年のミュージカル作品に興味を持ちました。未だにこの曲を聴くと『雨に唄えば』(52年)や『パリの恋人』といったミュージカルの名作を観たくなってしまいます。杉さんには音楽と同じくらい映画の好みにも影響を受けたような気がします。
 『パリの恋人』はファッション界を舞台に、トップモデルへと変貌する書店の娘とカメラマンの恋を描くロマンティックなシンデレラ・ストーリー。ヘップバーンの相手役を演じたフレッド・アステアについては、RKO時代のミュージカル作品が大好きでした。この映画の時にはもう初老といった感じですが、若いヘップバーンを相手に相変わらず粋なステップを見せてくれます。一時期同じMGMで活躍したジーン・ケリーと比べても洗練さではアステアに軍配が上がるでしょう。彼のダンスには長い手足の動き、周りの空間の取り方、ステッキや帽子といった小物の使い方など全てに気品があり、いつまでも眺めていたいと思わせる優雅さがあります。
  また本作は撮影監修者として参加した写真家、リチャード・アヴェドンのグラフィック・センスや、ジバンシィの衣装デザインなど、50年代という時代の豊かさとお洒落さに満ち溢れています。更にガーシュインを主とする音楽も素晴らしく、サントラも大好きな1枚。パリに初めて行った時、映画と同じ様に「Bonjour, Paris!」を聴きながら街を散策したというベタで恥ずかしい思い出もあります。