『80日間世界一周』
「Around The World In 80 Days」(1956年 アメリカ)
 本作の見所は何と言っても、本編のストーリーを6分20秒の長さに及ぶ銅版画風アニメで表現したソール・バス渾身のエンド・タイトル。もはや一遍の短編アニメ作品として素晴しい出来です。
 ソール・バスと言えば主に50〜70年代、個性的なヴィジュアルとアニメーションで数多くの名作タイトルを手掛けたクリエイターで、ヒッチコックの作品群でつとに有名ですが、今回は個人的に好きな作品をいくつか紹介してみようと思います。まずは、ポスターからサントラまであらゆるヴィジュアルをバスのデザインで統一させた『黄金の腕』(55年)や、死体のシルエットを効果的に使ったタイトル・アニメが逸品な『或る殺人』(59年)などは基本中の基本。ビリー・ワイルダー監督の『七年目の浮気』(55年)では、カラフルなパズルがパタパタと捲れてクレジットが見え隠れするというお洒落で可愛いタイトル・アニメが観られ、総天然色という言葉を感じさせる大好きな作品。スペクタクル風味のスラップスティック作品(のわりにはそんなに笑えなかった)『おかしなおかしなおかしな世界』(63年)のタイトル・アニメもバスの代表作。あのクレヨンで描いたような特徴的なイラストが動くだけで見入ってしまいます。彼の映像センスがイヤというほど分かるのが『グランプリ』(66年)で、モーリス・ジャールの音楽をバックに、F1のタコメーターやタイヤを、アップやマルチ分割スクリーンによって演出し緊張感あるオープニングに仕上げていてさすがの出来。大物が大挙出演するためか、ちょっと凝り過ぎの感もある『ザッツ・エンタテインメントPART2』(77年)のクレジットもバスの仕事。「シンプルな美しさ」という彼の個性があまり発揮されていないのが惜しいかな。