『グエムル −漢江の怪物−』
「The Host」 (2006年 韓国)
 ある日ソウルの中心を流れる漢江の河川敷に、正体不明の巨大生物が出現。多数の見物人を襲って姿をくらました怪物"グエムル"に、河川敷で売店を営むパク一家の孫娘ヒョンソがさらわれてしまいます。政府が敷いた厳戒令の中、パク一家は家族全員でグエムルに立ち向かう…。と、ストーリーだけを読むと円谷作品と何ら変わりはないのですが、従来の怪獣映画の枠組みを全く感じさせないのは、ある一家に焦点を絞ったパニック映画として描かれているところ。実際、休日の平和な河川敷に突然怪物が現れて人を襲う冒頭30分の超リアルな映像は、スピルバーグの『宇宙戦争』(05年)を彷彿とさせます。その後、犠牲者の合同葬儀のシーンがあったりして(今まで合同葬儀のシーンがある怪獣映画があったでしょうか!?)徹底したリアル主義が貫かれていますが、後半の家族vsグエムルの決戦では日本産アニメ/ゲーム的な描写も増えていきます。監督のポン・ジュノは制作当時37歳。ということは漫画やゲームといった異ジャンルの導入を積極的に行う世代であり、その作品の魅力は、例えば日本の名作コミック『寄生獣』辺りの世界観に通じる、現実とフィクションの絶妙な距離感にあると思います。もともと日本のオハコだったこういう映画を韓国のクリエイターが(高クオリティで)作ってしまったことに驚きました。
 ポン・ジュノ監督の前作『殺人の追憶』(03年)でもコミカルな演技を見せていたソン・ガンホ、山下敦弘監督による傑作青春映画『リンダ リンダ リンダ』(05年)で最高のキャラを作り出したペ・ドゥナなど、役者陣も魅力的。特にアーチェリー選手という設定のペ・ドゥナが、弓矢一本でグエムルに立ち向かうエンディングは笑いと興奮を同時に呼び起こす最高のシーンです。