『パッチギ!』
(2004年 日本)
 『パッチギ!』はここ数年の邦画の中で特に好きな映画です。社会性とアホらしいほどのエンターテイメント性、暴力と恋愛、歴史と現在…。対立するあらゆる要素が詰め込まれていて、そして何より映画として面白い。全然期待しないで観たけど、映画館を出る時は久々に爽快感に包まれました。
 日本人高校生の男子と在日朝鮮人の女子によるロミオとジュリエット風の恋愛を軸に描かれていくのですが、背景となった1968年という時代のせいか、純粋なラヴ・ストーリーに終始せず、様々な問題が加味されていきます。そんな時代を象徴する曲として、また作品の主題の根幹として登場するのがザ・フォーク・クルセダーズの「イムジン河」。この曲の紆余曲折については知っていた気になっていましたが、映画の元となった原作を書いた松山猛氏の体験談としてこのように映像化されると、ある世代にとってのこの曲の存在感の重さみたいなものがリアルに胸に迫ってきました。今はもう「歌は世につれ、世は歌につれ」という時代じゃないからかも知れませんが、確実に時代と歌が寄り添っていた昔が眩しくも感じられました。
 在日のキョンジャ役を演じた沢尻エリカの芯のある佇まいにもやられました(この映画の彼女は本当に良い。女優としてはいいものを持っていると思うんですが…)。それと相手を容赦しない派手なケンカ・シーンにも熱くなりました。本作の暴力描写には嫌悪感を感じた人もいたようですが、僕は流行の甘ったるい恋愛映画に喝を入れるべく、敢えてそうしたとも思える井筒和幸監督の男気を感じました。テレビによく出てる映画監督ってなんか信頼できないけど、あの人、ただの怒ってるオッサンじゃなかったんですねぇ。