『グッドナイト&グッドラック』
「Good Night, And Good Luck.」 (2005年 アメリカ)
 ブライアン・デ・パルマ監督の『ブラック・ダリア』(06年)や、同じくジャイムズ・エルロイ原作の『L.A.コンフィデンシャル』(97年)など、40年代から50年代のアメリカを舞台にした映画に惹かれます。この時代特有の影の部分に反応してしまうからなのですが、その影とはソ連との冷戦下における共産主義や核兵器への恐怖や緊張感から生まれたものであり、例えばロジャー・コーマンやエド・ウッドの怪奇SF映画もそんな時代だからこその産物だと言えます。本作もそんな時代のお話。冷戦への恐怖を利用して売名行為をするマッカーシー上院議員が幅を利かせていた50年代、いわゆる"赤狩り"の時代。この扇動的な反共キャンペーンに真っ向から異を唱えたジャーナリスト、エド・マローの戦いを描いた真実の物語です。いじめの問題で「いじめる側に回らないと自分もいじめられるから」という言葉をよく耳にしますが、この頃の米全土はまさしくこの状態で、自分が共産主義者ではないと証明する代わりに他人を密告するという、とんでもない相互不信の時代でした。CBSの報道番組でキャスターを務めていたマローは、国民の自由を取り戻そうとマッカーシーの虚偽と策謀の事実を報じ続けます。実際の映像を織り込んだ、このマローvsマッカーシーの緊張感溢れるやり取りが本作の醍醐味。マロー役のデヴィッド・ストラザーンは今まで全くのノーチェックでしたが、ダンディズムの何たるかを知り尽くした素晴らしい役者です。
 監督・共同脚本はジョージ・クルーニー。ニュース・キャスターの父を持つ彼の知的な演出には舌を巻きました。シャープなモノクロ映像、時折挿入されるダイアン・リーヴスのジャジーなステージなど、自分が憧れる50年代の空気感が全て再現されています。まさに大人の男のための珠玉の作品です。