『五線譜のラブレター De-Lovely』
「De-Lovely」(2004年 アメリカ/イギリス)
 ケビン・クラインが、アメリカが愛する作曲家コール・ポーターを熱演して話題となった伝記映画です。
 当事者が自分の過去を第三者に語りながら話を進めていくといった形で(あの『アマデウス』の手法ですね)展開するストーリーは、上流階級出身のコール・ポーターらしく実に優雅で享楽的。同性愛者であったという事実もスパイス程度のものでしかなく、それよりも妻リンダの献身的な愛が大きなテーマであり、ジャーナリズム的下世話さは皆無な、実に品の良いラヴ・ストーリーといった印象。そしてやはりミュージカル・シーンなどで歌われる珠玉の名曲群が本作の主役であると断言できます(なにせエルヴィス・コステロやシェリル・クロウ、アラニス・モリセットら有名アーティストが次々と登場してミュージカル・ナンバーを歌うのだからたまらない)。
 コール・ポーターという作曲家はそんなには意識してこなかったけれど、知っている曲ばかりだったことに驚きました。よくよく考えたら「Night And Day」はフランク・シナトラで、「True Love」はリッキー・ネルソンで、「I've Got You Under My Skin」はフォー・シーズンズで、「Anything Goes」はハーパース・ビザールで散々聴いていたし、「In The Still Of The Night」はネヴィル・ブラザーズのヴァージョンが大好きでした。ポップスを普通に聴いていると避けては通れない(というかいつのまにか通ってしまっている)という、アメリカ音楽の脈々と連なる伝統をつくづく感じてしまいます。極めつけはナタリー・コールが歌う「Ev'ry Time We Say Goodbye」。曲そのものが持つ魅力に感動し、不覚にも涙腺が緩んでしまいました。音楽好きの方にはお薦めの映画です。