『みんなのうた』
「A Mighty Wind」(2003年 アメリカ)
 「みんなのうた」というトホホな邦題のせいか、フォークという微妙な題材のせいか、公開後1週間で打ち切りという憂き目にあった音楽映画です。ドキュメンタリーを装ったフィクションで展開される表現方法は、迷作『スパイナル・タップ』(82年)と全く同じ。なんか似てるなあと思って観てたら同じ制作スタッフでした。60年代に一大フォーク・ブームを巻き起こした業界の大物が死去し、その息子が追悼コンサートのために父親が育てたフォーク・グループを再結成させるというストーリー。60年代という時代を知っていれば知っているほど「あるある」的な笑いが怒濤のように襲ってきます。出てくるグループのモデルは確実にキングストン・トリオだったりイアン&シルビアだったりするわけですが、メンバーのキャラ設定が、新興宗教にハマってたり、精神を病んでたり、オカマだったりして結構ヤバめ。例えばソロになって売れなくなったメンバーが精神病院入院中に出したアルバム・タイトルが「If I Had A Hammer」(60年代フォークの代表曲)ならぬ「If I Had A Gun」だったりするシュールな小ネタも満載。そんなシニカルな笑いの中にも、出てくる人間や時代に対する目線には愛情が溢れているのです。パンフに掲載されている出演者のジョン・マイケル・ビギンズのコメントにそれが表れています。「この作品に出てくるのは、あまり人気があるとは言えない何かに対して情熱を傾けてる人たち。彼らはかっこよくないけど情熱的なんだ。でも情熱的である以上にかっこいいことってある?」…いい言葉ですね。
  ちなみに音楽はなんちゃってフォークどころかかなり本格的なフォーク・ミュージックになっています。それもそのはずプロデュースはT・ボーン・バーネット。